シンガーモデル103Kの職業用足踏みミシンです。こちらの機種は良くドイツ製が入荷しますが、今回は珍しくイギリス製のものが入ってきました。ご覧のようにこちらのミシンのベッド中央には他の機種ではあまり見かけない篆書のデカールが残っています。書き換えると「信造生糕廠」とのことで、シンガー工場謹製といった意味になります。当時の世界情勢から考えるとおそらくイギリス統治下であった香港向けに輸出され日本に渡ってきたものと推察しています。ミシン上部にはフランス語による表記もあり、当時シンガーが世界企業であったことがうかがえます。機械としてはその他の職業用ミシンと全く変わらず、スピードある縫製ができる良い足踏みみしんです。

　針は工業用・職業用として売られているミシン針（DBx1など）が使用できます。釜は垂直全回転釜で高速に強く、脚部のベルト車も直径が大きいため、スピードとパワーの両方に対応したミシンとも言えます。

　機械は分解掃除をして調整いたしました。ベルトなどの消耗品は交換いたしました。工業用ミシン針（DBｘ１など）・ボビンケース・ボビンなど市販されているものが使用できます。返し縫い機能があります。上で説明したベッドの模様も残っています。

　台は職業用ミシンらしく使用感がありましたので古い塗装を手作業で研磨して色味の調整や補修をして、当店独自の天然ステインで調色後にニスで再塗装をいたしました。使用した塗料は天然樹脂シェラックニス。古くから使用される天然樹脂の塗料で、アンティーク家具の補修や塗装に使われてきました。天然素材で石油系シンナーなども使用しておらず、またホルムアルデヒドの吸着効果もあると言われています。ただ、熱やアルコールに弱いので、熱いコーヒーカップや消毒アルコールなどを置かないようにしてください。また水気のある花瓶も避けた方がよいでしょう。脚は分解クリーニング後に再塗装をして機械の調整もしております。

　その歴史が気になるシンガー職業用足踏みミシンです。